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ストーリー | 漢方カフェ いろは

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ストーリー

巡りごはん いろは 物語

プロローグ 巡る、巡る。

「美味しかった!また来るね!」
にこやかにお客様が声をかけてくださいました。

「有難うございました!またお待ちしております!」
こみあげてくる感謝の想いでお見送りです。

ランチタイムが終わり、ゆっくりと片付けを始めながら、
大阪府茨木市の「巡りごはん いろは」の オーナー鍋谷充子は、
ふと考えます。

人の身体に巡っているものは、血液以外に何があるのだろう。
今まで学んできた漢方の世界では「気」が巡る、という考え方がある。

「でも、目には見えない「気」ってどんなもの?」
自分自身、感覚では分かっているものの、上手く伝えられない。

「目に見えたとしたら、どんなものだろう?」
片付けの手を止め、想いを巡らせた。

第一章 少しだけ前向きに

少し昔のお話しです。
結婚当初はペットショップの用品担当として
忙しい毎日を過ごしていました。

「この間勧めてくれたの、すごく助かってるわ。有難う。」

お客様と接することが何よりも好きで、
こんな言葉をかけてもらえることで、やりがいを感じていました。

円満な夫婦生活を過ごす中、2年ほど経ち、
そろそろ子どもを・・・と想い始めました。

しかし想いとは裏腹に、なかなか授かりません。

「治療法が合っていないのかも。」
続けていた不妊治療から、食事療法に切り替えました。

「食べるもので、身体を変えてゆこう。」
食事に関する本を読み、スポーツジムに通い運動。
東洋医学を意識し、漢方の勉強を始めました。
夫も鍼灸師の資格取得のために、学校に通い始めました。

少し前向きになれた自分に、戸惑いつつもささやかな充実感を
感じ始めました。

第二章 木漏れ日の中で

ある時実家に帰ってみると、母の様子がおかしいことに気づきました。

覇気がなく、口を開けば「しんどい」、二言目には「イライラする」。
そして、
「最近全然眠れなくて・・・。」

母に処方された薬を管理しながら、
一緒に内科・婦人科・心療内科の病院に付き添います。

しかし改善には向かわず、不眠症状に食欲不振と悪化の一歩をたどります。

「お母さん、足をマッサージしてあげる。」
できることを最大限続けました。
温灸をし、昼間にはなんとか散歩に連れ出します。

「有難う、充子。せやけど、じっとしときたいねん。」

とうとう寝込んでしまい、20日ほど一歩も家から出ないという日もありました。

藁にもすがる想いで、夫が学んでいる学校の先生にお願いし、
鍼灸院へ母を連れてゆくことにしました。

しっかりと向き合って、母の症状を理解してくれる先生。

「少し分かりにくい表現ですが、お母さんの症状は身体を巡る「気」
が上がってしまっています。ですので、「気」を引き下ろすための
鍼治療を行い、漢方を処方しますね。」

分かりやすく言うと、血液とは別に身体を巡るエネルギーが
滞っているので、正常に戻すよう施術するということ。

2日後。偶然にも母の誕生日。
驚くことが起きました。

朝、いつもと同じように実家に顔を出します。
すると、母が自ら布団を上げていたのです。

「今日は天気もいいから、どっかに出かけたいわ。」

こみ上げるものに、目頭が熱くなります。

「うん、うん。」
私は頷くことしかできません。
優しい木漏れ日の中での散歩の途中、母がつぶやきました。

「これからの人生、どうやって過ごそうかな。」

第参章 巡りついて

残念ながら、今日母は天国にいます。
それでも、ほんの少しの時間でも母に、母自身を取り戻させて
くれた東洋医学、漢方に感謝しています。

たとえ短い時間であったとしても、母を救ってくれた漢方を勉強し、
薬局を開業するための登録販売者の資格を取りました。

ただ、漢方を良く知らない人にとっては、
「漢方薬店」の看板を見てもなかなか気軽に入れるものでは
ありません。

気軽に入れて、漢方と触れ合う機会が持てる空間。

そして巡りついたのが「漢方(薬膳)カフェ」でした。

エピローグ

「日の光」が巡る。「雨の恵み」が巡る。

「お早うございます」が巡る。「こんにちは」が巡る。

誰かが誰かをいたわって、声をかける。
「お久しぶり」が巡り、「元気でね」が巡る。

人の身体に巡っているものは、血液以外に何があるのだろう。
学んできた漢方の世界では「気」が巡る、という考え方がある。

「でも、目には見えない「気」ってどんなもの?」

自分自身、感覚では分かっているものの、上手く伝えられない。

「目に見えたとしたら、どんなものだろう?」

今日のランチタイムの最後のお客様を想いだし、
思わず「はっ」としました。

それは、お客様がかけてくださった言葉。

「美味しかった!また来るね!」

「有難うございました!またお待ちしております!」

そして、こみあげてくる感謝の想いでお見送りしたこと。

店内に降り注ぐ、木漏れ日のような光を眺めながら、
思わずこぼれた言葉に微笑みました。

「何も難しく考えることなかったんだ。」

一息ついて、天国にも届くようにこう言います。

「皆さんに幸せが健やかに巡りますように。」

巡りごはん いろは の鍋谷充子は、
そんな想いを込めて、今日もメニューを考えています。

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